SAKURAプロジェクト

がん患者の抑うつ・不安に対するスマートフォン精神療法の最適化研究:
革新的臨床試験システムを用いた多相最適化戦略試験

研究説明文書

SAKURAプロジェクトの研究説明文書を記載しています。

更新日:2023/05/11

「乳がん患者の乳房切除後疼痛症候群に対するスマホ認知行動療法の開発研究」の実施計画と研究組織は、以下の通りです。

1 本研究について

がん治療の発展は目覚ましい一方で、治療後のがんサバイバーシップにおいて、患者さんはさまざまな苦痛症状を経験しています。その中でも手術を受けた乳がん患者さんの20-60%が慢性、遷延性の疼痛を有し、これは乳房切除後疼痛症候群(Post Mastectomy Pain Syndrome: PMPS)と呼ばれ、患者さんの就労や再発恐怖にも悪影響を及ぼし、生活の質を低下させることが報告されています。PMPSの原因はわかっていない部分が多く、神経ブロックや抗うつ薬等の薬物療法、理学療法など様々な治療が行われていますが、標準的な治療はまだありません。しかし、慢性疼痛に対して薬を使わず、心理的な手段を用いて患者の心身に働きかける精神療法の高い有用性が国内外から報告されています。

私たちのグループは、がんの患者さんに、よりよいケアを提供するための試験に取り組んでおります。現在、私たちの研究グループは、スマートフォンのアプリを用いて、乳がんの手術や再建のための手術を受けた後にみなさんが経験されている痛みとの上手な関わり方を身につけていただくことで、よりよく生活することができるようになるのかを調べる研究を行なっています。この支援方法は有用である可能性がありますが、まだ科学的に証明されていません。

以下に研究の内容について説明してありますので、よくお読みになった上で、ご協力いただける 場合には、ホームページから参加希望の手続きにお進みください。その後、事務局でいくつかのことを確認させていただいたうえで、ウェブサイトから研究参加への同意手続きに進ませていただきます。もし同意書類を郵送する方法での参加希望をされる場合は、事務局からの参加確認のお電話の際に郵送を希望する旨お伝えください。事務局から同意書類を郵送いたします。また、同意手続きが完了した場合、後日メールにてお知らせいたします。メールとともに、この説明同意書もダウンロードもしくは印刷して大切に保管してください。

この研究を実施することについては、名古屋市立大学医学系研究倫理審査委員会(所在地:名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1)において医学、歯学、薬学その他の医療又は研究に関する専門家や専門以外の方々により倫理性や科学性が十分であるかどうかの審査を受け、承認されたうえで、研究を実施する研究機関の長から研究を実施することについての許可を受けています。また委員会では、この研究が適正に実施されているか継続して審査を行います。

また、本研究は名古屋市立大学大学院 医学研究科長および名古屋市立大学病院長の許可を得て実施しています。

名古屋市立大学病院 臨床研究開発支援センター ホームページ “患者の皆様へ”

http://ncu-cr.jp/patient

2 本研究施設における研究責任者の氏名および研究分担者の氏名

研究課題名 乳がん患者の乳房切除後疼痛症候群に対するスマホ認知行動療法の 開発研究
研究機関名 名古屋市立大学大学院医学研究科
研究責任者職名・氏名 精神・認知・行動医学分野 教授 明智龍男
研究分担者職名・氏名 乳腺外科学分野 教授  遠山 竜也
麻酔科学・集中治療医学分野 疼痛医学部門 教授  杉浦 健之
共同研究教育センター・臨床研究開発支援センター 特任准教授  橋本 大哉
精神・認知・行動医学分野 講師  内田 恵
精神・認知・行動医学分野 特任助教  酒井 美枝

3 研究の目的、意義

多くの乳がん患者さんは手術後時間が経過しても痛みを経験していることが明らかになっています。その痛みのメカニズムはまだわかっておりませんが、慢性的に続く痛みに関しては新世代の認知行動療法であるアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT:痛みや不安など悩んでいる症状とうまく関わるコツをつかみながら(アクセプタンス)、自分の人生で大切にしたいことに向かって生きること(コミットメント)を目指す心理療法)が有効であることが示されています。また、近年、スマートフォンが普及し、生活のうえで身近なものになってきていることを踏まえ、私たちのグループはスマートフォンのアプリを用いて、痛みについて正しい知識を身につけるとともに、乳がんの手術や再建のための手術を受けた後にみなさんが経験されている痛みとの上手な付き合い方を身につけていただくことで、よりよく生活することができるようになるのかを調べます。

4 あなたがこの研究の対象者として選定された理由

以下のすべてに当てはまる方は、この研究に参加いただけます。

① 乳がん診断を受けている
② 乳がん術後1年以上経過して、がんが再発していない
③ 同意を頂いた時点で18歳以上
④ 乳がん手術後に長引く痛み(術後から、手術部、脇の下、手術を受けた側の腕の痛み)が術後1年経過した時点でも存在する、あるいは、再建術に関連する部位(再建部および再建のために手術を受けた背部や腹部など)の痛みが再建術後1年経過した時点でも存在する
⑤ スマートフォンを日常的に使い、スマートフォンを介した質問票に回答することができる方

また、以下の条件に1つでもあてはまる方は、この研究にご参加いただけません。
① 日本語の読み書きが難しい方
② がん以外によると思われる原因の痛みを有しその治療を受けている方
③ 創部(傷口)・腋・腕以外に痛みを有しその治療を受けている方
④ 質問票への正確な回答が困難な精神症状がある方(例:認知症・重症のうつ病や統合失調症)
⑤ 重篤な体の病気があり心理療法が困難な方
⑥ 過去にACTを受けたことがある方
⑦ 研究者が研究への参加を不適当であると判断させていただいた場合

*上記基準に関しては、臨床研究コーディネーターが最終的に電話で確認させていただきます。

5 この研究の方法及び期間

【本研究の方法】

今回、研究への参加に同意をいただけましたら、8週間のACTを行う群と通常治療のみを行う群に分かれます。通常治療のみを行う群の場合、希望があれば8週間後にACTを行うことができます。 この割り振りに関しては、コンピューターが無作為に決定します。この決定に関しては、参加者自身あるいは研究責任者は関与することができません。この手法を「ランダム化」と言い、治療の有効性を確かめるために行われる科学的手法の一つで、2通りのどれになるかの確率は均等にされています。

【皆様に具体的にお願いしたいこと】

①アンケート調査

研究に参加していただく皆様に対して、普段の治療やスマートフォンを用いた介入が行われる 前後の状態を把握するために、アンケート調査を行います。これによって気持ちの状態などを把握します。皆様に調査を4回実施させて頂く予定で、時期は同意時(第0週)、研究に参加されてから2週後、4週後、8週後になります。この時期になりましたら、スマートフォンのウェブ上でアンケートにお答えください。第2週、第4週、第8週のアンケートの入力が完了していない場合、研究事務局からメールやお電話をさせていただく予定ですのでご了承ください。

②スマートフォンを用いたACTへの参加

同意時(第0週)の1回目のアンケート入力後、スマートフォン介入群の方はすぐにスマートフォンを用いたACTを実施していただきます。通常治療群の方は8週後からスマートフォンを用いたACTを実施することができます。

スマートフォンを用いたACTはアプリを使い、ご自身で進めていただきます(人によって異なりますが、アプリの実施は週におおよそ30分から40分程度かかります)。通常治療群の方も、第8週のアンケートにお答えいただいた後、ご希望があれば8週後以降にスマートフォンを用いたACTを使用することができます。 

BPI:痛みの強さと生活への支障に関する質問票
MDASI:痺れと倦怠感に関する質問票
CPAQ:痛みの受容に関する質問票
FCRI:再発恐怖に関する質問票
HADS:不安や抑うつに関する質問票
AAQ-2:心理的柔軟性に関する質問票
VQ:価値に沿った生活の程度に関する質問票
EQ5D:QOLに関する質問票
WPAI:労働生産性に関する質問票

  項目 第0週 第2週 第4週 第8週
参加者がスマ−トフォンから入力 基本属性      
参加者がスマ−トフォンから入力し,研究者
  あるいは臨床試験コーディネーターが電話で補足聴取
説明と同意取得      
参加者がスマフォから入力 アンケート調査

◎:10分〜15分のアンケート調査
○:5分〜10分のアンケート調査
△:数分のアンケート調査

スマートフォンACTアプリ
 “SUSMEDアプリ” (名古屋市立大学と(株)サスメドの共同開発)
iOS端末 ※iOS13.0以上インストール可能
Android端末 ※OS6.0以上インストール可能

【本研究全体の実施予定期間とあなたに参加いただく期間】

研究全体の実施予定期間は9ヶ月を予定しており、皆様に参加いただく期間は2ヶ月(8週)です。

【予定される研究対象者の数】

すぐにスマートフォン介入を始める群グループが20名、8週後に始めるグループが20名、計40名を予定しております。

6 あなたがこの研究に参加することによって期待される利益と予測される負担やリスク

≪利益について≫

本研究では、スマートフォンを用いたACTを行います。研究に参加して頂くことによって、痛みや精神心理的な負担が軽減し、生活の質が改善する可能性があります。

≪不利益(負担やリスク)について≫

本研究は、アンケートへの入力、メール、スマートフォンのアプリ操作が主で、皆様の身体に与える悪影響はございません。しかしながら、内面的なことに触れることで皆様に不快感を与えることがあるかもしれません。また、アンケート回答やアプリのダウンロード・利用時にスマートフォンの通信費をご負担いただきます。一方、これまでの私どもの同様の研究の経験からは、不利益はほとんどないと考えております。万が一本試験に参加中に健康被害が生じるような状況を認めた場合は、速やかに研究事務局(14の問い合わせ先)に相談して下さるようお願いいたします。

7 同意の撤回の自由について

本研究へのご協力は皆様個人の自由意思によるものです。いったん同意された後でも、理由を明確にすることなくいつでも同意を撤回することができます。この説明書を読まれたからといって参加されない場合や途中で撤回する場合でも、何ら不利益は生じません。同意を撤回する場合、アンケートを入力するウェブサイトに同意撤回の項目がありますので、そちらをお選びください。

8 研究への参加に同意しなくても、途中で同意を撤回しても、不利益な取り扱いを受けることはありません

あなたがこの研究への参加に同意されない場合や、途中で参加をとりやめる場合でも、今後の治療等で決して不利益を受けることはありません。

9 研究に関する情報公開

この研究はJapan Registry of Clinical Trials : jRCT(厚生労働省が整備するデータベース)に記録され公表されています。また、結果についてもあなたの個人情報を保全した上でjRCTにおいて公表されます。
掲載場所:URL: https://jrct.niph.go.jp/
個人情報が分からないようにした上で、本研究の結果を統計学的に分析し、結果及び臨床研究を通じて得られたあなたに係わる記録が、医学および看護学の発展のため学会や学術雑誌等で公表される予定であることをご了承下さい。

10 研究計画書及び研究の方法関する資料の入手または閲覧できる旨、その方法

あなたが希望すれば、他の参加者の個人情報や本研究の独創性の確保に支障がない範囲内で、研究計画および研究の方法に関する資料を閲覧することができます。閲覧希望の場合は事務局までお問合せください。

11 個人情報等の取り扱い

この研究で得られたアンケート(データ)の結果は、主にスマートフォンを用いた介入前後の状態を比較するために用います。これらのアンケートデータは、研究IDを用いて管理され、名前や年齢などの個人情報とは分けて保存するため、研究者に個人情報が知られることはありません。
また、個人情報と研究IDとの対応表については、研究事務局が厳重に管理いたします。

12 情報の保管方法、廃棄方法

あなたから収集したデータ等は、この研究の終了について報告した日から5年を経過した日、またはこの研究の結果の最終の公表について報告した日から3年を経過した日のいずれか遅い日までの期間保管されます。
保管期間が経過した場合、紙媒体の資料は、シュレッダーで裁断し、再現不可能な状態にした上で廃棄し、書き換え不可能な電子媒体の場合、物理的に破壊してデータ読み取りを不可能にした上で、適切に廃棄します。また、書き換え可能な電子媒体のデータの場合、物理的に破壊してデータ読み取りを不可能にするか、又はダミーデータを複数回上書きして元のデータを復元不可能な状態にした上で、同様に廃棄します。あなたが同意を撤回した場合、その時点で同様に紙媒体及び電子媒体の資料を廃棄します。

13 あなたから頂いた情報について、将来の他の研究に用いられる可能性、又は他の研究機関に提供する可能性

この研究では、あなたから提供いただいた情報を、将来の他の研究に用いることや、他の機関へ提供する可能性はありません。

14 研究についてのご相談、健康状態に問題があると感じられたときの医療機関の連絡先

この研究について知りたいことや、ご心配なことがありましたら、遠慮なくご相談ください。

【当施設における問い合わせ先】

研究実施機関:名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学

電話:090-7604-1824
メール:info@sakura-pj.org

(対応可能時間帯)平日12:00~15:00、16:00~19:00

対応者: 酒井美枝さかいみえ   内田恵うちだめぐみ  明智龍男あけちたつお

15 あなたに対する費用負担、謝礼の有無

スマートフォンアプリはすべて無料でご利用いただけます。ただし、ご利用の携帯電話会社にはアプリの使用時やデータの送受信にかかる通信料はお支払いいただく必要があります。また、本研究へのご参加に関して、些少ながら謝礼(アマゾンギフト券:アンケートに全て回答してくださった場合は5000円分 電話によるアンケートに回答してくださった場合は更に2000円分)をメールにてお送りさせていただきます(なお、クオカードの郵送になる場合もございます)。

16 他の治療方法等について

この研究に参加しても参加しなくても行う治療は同じです。

17 研究実施後の医療の提供に関する対応

この研究に参加していただいた後の治療等に制限はありません。

18 研究によって生じた健康被害に対する補償の有無、その内容

本研究は、ほぼ危険性は伴わないため、この研究を行うことによる健康被害に対して補償や賠償保険などは準備しておりません。もし、身体状態や精神状態が悪化した場合には、お手数ですがかかりつけの医療機関や主治医にご相談いただければ幸いです。

19 モニタリング及び監査について

本研究においてはモニタリングや監査は行う予定はありません。

20 この研究の資金源及び利益相反(COI(シーオーアイ):Conflict of Interest)について

研究一般における、利益相反(COI)とは「主に経済的な利害関係によって公正かつ適正な判断が歪められてしまうこと、または、歪められているのではないかと疑われかねない事態」のことを指します。具体的には、企業等が研究に対してその資金を提供している場合や、研究に携わる研究者等との間で行われる株券を含んだ金銭の授受があるような場合です。このような経済的活動が、研究の結果を特定の企業や個人にとって有利な方向に歪曲させる可能性を判断する必要があり、そのために研究の資金源や、各研究者の利害関係を申告することが定められています。
本研究は、日本医療研究開発機構研究費「乳がん患者の乳房切除後疼痛症候群に対するスマ–トフォン認知行動療法の開発:革新的な分散型基盤を用いた多機関共同無作為割付比較試験(主任研究者 明智龍男)」の研究助成により実施するものです。
なお、この研究では、企業等の関与と、研究責任者および研究分担者等の利益相反申告が必要とされる者の利益相反(COI)について、名古屋市立大学大学院医学研究科医学研究等利益相反委員会の手続きを終了しています。

21 研究成果の帰属について

この研究で得られるデータ又は発見に関しては、研究者もしくは研究者の所属する研究機関が権利保有者となります。この研究で得られるデータを対象とした解析結果に基づき、特許権等が生み出される可能性がありますが、ある特定の個人のデータから得られる結果に基づいて行われることはありません。したがって、このような場合でも、あなたが経済的利益を得ることはなく、あらゆる権利は、研究者もしくは研究者の所属する研究機関にあることをご了承ください。

22 開発業務委託機関について

アプリの開発、データ管理システム構築をサスメド株式会社に、研究用ホームページの開発と電磁的インフォームド・コンセントなど患者登録管理システム構築を株式会社アクセライトに業務委託しております。

研究参加のお申込み

研究参加のお申し込みは以下のフォームよりお願いいたします。

ページのTOPへ