研究説明文書
SAKURAプロジェクトの研究説明文書を記載しています。
更新日:2025/09/19
本研究の実施計画と研究組織は、以下の通りです。
「乳がん切除後疼痛症候群に対するスマートフォンによる心理療法の開発と有用性 :分散型臨床試験基盤を用いた多施設共同シャム対照二重盲検 ランダム化並行群間比較試験」について
~研究の説明文書・同意文書~
| 研究機関の名称 | 名古屋市立大学大学 | ||
|---|---|---|---|
| 研究責任者 | 医学研究科・精神・認知・行動医学 | 明智 龍男 | |
| 研究分担者 | 医学研究科 乳腺外科学 | 遠山 竜也 | |
| 医学研究科・精神・認知・行動医学 | 酒井 美枝 | ||
| 医学研究科・精神・認知・行動医学 | 利重 裕子 | ||
この説明文書は、あなたにこの研究の内容を正しく理解していただき、この研究に参加するかどうかを判断していただくためのものです。
参加するかどうかは、あなたの自由な意思で決めてください。
この説明文書に書かれている内容について、すべて理解した上で、研究に参加をしていただける場合は、同意書に署名してください。
分からないことや不安なことがある場合は、研究責任者、研究分担者、または 担当医師にお聞きください。
1 はじめに
がん治療の発展は目覚ましい一方で、一定数の患者さんは、治療後に生活を送っていく中で、様々な苦痛症状を経験されていることが報告されています。その中でも、手術を受けた乳がん患者さんの20-60%が慢性的な痛みを有していて、これは乳房切除後疼痛症候群(Post Mastectomy Pain Syndrome: PMPS)と呼ばれ、患者さんの就労や再発恐怖にも悪影響を及ぼし、生活の質を低下させることが報告されています。
PMPSの原因はわかっていない部分が多く、神経ブロックや抗うつ薬等の薬物療法、理学療法など様々な治療が行われていますが、標準的な治療はまだありません。しかし、慢性の痛みに対して薬を使わず、心理的な方法で患者さんの心身に働きかける心理療法の有用性が国内外から報告されています。
私たちの研究グループは、がんの患者さんに、よりよいケアを提供するための試験に取り組んでおります。この研究では、乳がんの手術や再建のための手術を受けた後にみなさんが経験されている痛みを取り上げます。スマートフォン(スマホ)のアプリを用いて、長引く痛みとの効果的な関わり方を身につけていただくことで、皆さんがより良く生活できるようになるのかを調べていきます。この支援方法は有用である可能性がありますが、まだ科学的に証明されていません。
以下に、研究の内容について説明してありますので、よくお読みになった上で、ご協力いただける場合には、ホームページから参加希望の手続きにお進みください。研究事務局でいくつかのことを確認させていただいたうえで、ウェブサイトから研究参加への同意手続きに進ませていただきます。もし同意書類を郵送する方法での参加希望をされる場合は、事務局からの参加確認のお電話の際に、郵送を希望する旨お伝えください。事務局から同意書類を郵送いたします。また、同意手続きが完了した場合、後日メールにてお知らせいたします。メールとともに、この説明同意書についても、ダウンロードもしくは印刷して、大切に保管してください。
この研究は、名古屋市立大学医学系研究倫理審査委員会の審査を受け、承認されたうえで、研究機関の長から実施の許可を受けています。また、この研究が適正に実施されているか、継続して審査を受けます。
この委員会にかかわる規程等は、以下のwebサイトでご確認いただけます。
【名古屋市立大学病院臨床研究開発支援センター “患者の皆様へ”】
URL: https://ncu-cr.jp/patient
2 この研究の実施体制
この研究は、名古屋市立大学を中心として、複数の研究機関が共同で実施します。 実施体制は以下の通りです。
| 研究機関の名称 | 研究責任者 | |
|---|---|---|
| 研究代表機関 | 名古屋市立大学 | 明智龍男(研究代表者) |
| 共同研究機関 | 相良病院 | 相良安昭 |
| 赤羽乳腺クリニック | 赤羽和久 | |
| 国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 臨床研究企画管理部 | 橋本大哉 | |
| サスメド株式会社 | 上野太郎 |
3 この研究の目的、意義
多くの乳がん患者さんは、手術後時間が経過しても、痛みを経験していることが明らかになっています。その痛みのメカニズムはまだわかっておりませんが、慢性的に続く痛みに関しては、認知行動療法などの心理療法が有効であることが示されています。
また、近年、スマホが普及し、私たちが生活する上で身近なものになってきています。本研究の目的は、乳がんの手術や再建のための手術を受けた後に慢性の痛みを抱える皆さまが、心理療法のスマホ・アプリを用いることで、よりよく生活することができるようになるのかを調べることです。
4 あなたがこの研究の対象者に選ばれた理由
以下の項目の全てが当てはまる方に、この研究に参加していただけます。
① 乳がんの診断を受けている
② 乳がん術後1年以上経過して、がんが再発していない
③ 同意を頂いた時点で18歳以上
④ 乳がん手術後に遷延する痛み(術後から手術部、脇の下、手術を受けた側の腕の痛みがある)を有する、あるいは、再建術に関連する部位(再建部および再建のために手術を受けた背部や腹部など)の痛みが再建術後1年経過してもある方で、日常生活に支障があり、Brief Pain Inventory(BPI)における「痛みの強さ(平均)」および「痛みによる日常生活の全般的活動における支障(質問項目9-A)」が一定以上(4以上)の方
⑤ スマホを日常的に使い、本研究のスマホ・アプリを使用可能なAndroid またはiOS モバイル端末で、アプリを自分でインストールすることができ、研究期間中に使用できる方(OSバージョン:iOS15.0以上、Android6.0以上)
ただし、以下の項目に1つでも当てはまる場合は参加していただけません。
① 日本語の読み書きが難しい方
② がん手術以外が原因と思われる痛みを有しその治療を受けている方
③ 創部(傷口)・腋・腕以外に痛みを有しその治療を受けている方
④ 質問票への正確な回答が困難な精神症状がある方(例:認知症・重症のうつ病や統合失調症)
⑤ 重篤な体の病気があり心理療法が困難な方
⑥ 過去に、本アプリと同じ心理療法を受けたことがある方
⑦ 研究者が研究への参加を不適当であると判断させていただいた場合
*上記の基準に関しては、臨床研究コーディネーターが、最終的にお電話で確認させていただきます。
5 この研究の方法および実施する期間
1)研究実施期間
この研究の実施を許可された日から西暦2027年6月30日まで。 あなたが実際に本研究に参加する期間は、同意をいただいた日から8週間後までです。
2)研究対象者の数
全体で40名の方に参加いただく予定です。
3)研究の方法
今回、研究への参加に同意いただけましたら、2種類のアプリ(アプリA・アプリB)のいずれかの群(グループ)に割り付けられます。この決定に関しては、コンピューターが決定するもので、参加者自身あるいは研究責任者は関与することができません。この手法は治療の有効性を確かめるために行われる科学的手法で、2種類のどちらになるかの確率は均等にされています。
どちらの群に参加したとしても、それまでに実施されていた薬物療法などの通常行われる治療は、併せて行っていきます。研究に参加している期間中(8週間)は、痛みに対する治療を変えると、研究結果に影響する恐れがあるため、原則的には変更しないようお願いしていますが、必要なときには、医師の判断で変更可能です。痛みに対する治療を変更された場合は、どのような痛みの治療を新たに追加・変更したのか、アプリ上で入力をお願いします。
※皆様に具体的にお願いしたいこと
① 各アプリ内容の実施
あなたには、アプリAかアプリB、どちらかのアプリ内容を実施してもらいます。アプリを使用する前後の状態を把握するために、アンケート調査を行います。これによって気持ちの状態などを把握します。あなたには調査を4回実施させて頂く予定で、時期は同意時(第0週)、研究に参加されてから2週後、4週後、8週後です。この時期になりましたら、スマホのアプリから通知をしますので、スマホのウェブ上でアンケートにお答えください。第2週、第4週、第8週のアンケートの入力が完了していない場合、研究事務局からメールやお電話をさせていただく予定ですのでご了承ください。8週間後には、アプリの使用感等についてアンケート調査を行います。
| 項目 | 第0週 | 第2週 | 第4週 | 第8週 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 参加者がスマホから入力 | 基本属性 | 〇 | |||
| 参加者がスマホから入力し,研究者あるいは 臨床研究コーディネーターが電話で補足聴取 |
説明と同意取得 | 〇 | |||
| 参加者がスマホから入力 | 各アプリ内容 |
|
|||
<使用するアプリ>
“SUSMEDアプリ” (名古屋市立大学と(株)サスメドの共同開発)
iOS端末 ※iOS13.0以上インストール可能
Android端末 ※OS6.0以上インストール可能

eIC:電磁的な説明と同意
通常治療:医療機関で普段受けておられる治療を指します
PMPS:乳房切除後疼痛症候群
BPI:痛みの強さと生活への支障に関する質問票
MDASI:痺れと倦怠感に関する質問票
CPAQ:痛みの受容度合いに関する質問票
FCRI-SF:再発恐怖に関する質問票
WPAI:労働生産性に関する質問票
HADS:不安や抑うつに関する質問票
AAQ-2:心理的柔軟性に関する質問票
VQ:価値に沿った生活の程度に関する質問票
EQ5D:QOLに関する質問票
この研究では、国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 臨床研究企画管理部で解析を実施します。そのため、サスメド株式会社およびアクセライト株式会社が管理する、この研究用のWebサーバーに保管されたあなたの情報は、名古屋市立大学で集約し、最終的に、国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 臨床研究企画管理部へ提供します。情報は、氏名等の個人を特定できる記述を削除した状態で、電子メールにより送付します。
また、この研究では、iPhoneを使用している方のうち、同意の得られた方から、アプリ介入実施の際に、アプリ使用データ及びご使用の端末に記録されている過去1ヶ月間および研究に参加いただいている期間中の歩数データを取得させていただきます。これは、正しくアプリが使用されているかをチェックするとともに、今後アプリ内容やデザインの改良のために利用することが想定されます。歩数データは、他のアンケート(データ)などの 個人情報と同様に扱われます(「10 個人情報等の取り扱い」)。なお、アプリを開いた際に、アプリが歩数データにアクセスすることを許可するポップアップ画面が自動で表示され、許可をすることで歩数が取得されるようになります。(許可されない場合には、歩数データは取得されません)。
② 本研究におけるアプリ内容の秘密保持
本研究におけるアプリ内容については、ご家族以外の他者に開示して話したり、インターネットに載せたりしないようお願いします。
6 この研究に参加することで期待されるあなたの利益と予測される負担・リスク
≪利益について≫
あなたがこの研究に参加されますと、医学の進歩に貢献していただいたことになります。本研究において、アプリを利用することで、痛みや精神心理的な負担が軽減し、生活の質が改善する可能性があります。
≪不利益(負担やリスク)について≫
本研究は、アンケートへの入力、メール、スマホのアプリ操作が主で、あなたの身体に与える悪影響はございません。しかしながら、内面的なことに触れることで、あなたに不快感を与えることがあるかもしれません。また、アンケートへの回答や、アプリのダウンロード・利用時に、スマホの通信費をご負担いただきます。
一方、これまでの私どもの同様の研究の経験からは、不利益はほとんどないと考えております。万が一、本試験に参加中に健康被害が生じるような状況を認めた場合は、速やかに研究事務局(「14相談やお問合せがある場合の連絡先」の問い合わせ先)に相談して下さるようお願いいたします。
7 研究への参加の自由と同意撤回の自由
本研究へのご協力は、あなたの自由意思によるものです。いったん同意された後でも、理由を明確にすることなくいつでも同意を撤回することができます。この説明書を読まれたからといって、参加されない場合や途中で撤回する場合でも、何ら不利益は生じません。同意を撤回する場合、アンケートを入力するウェブサイトに同意撤回の項目がありますので、そちらをお選びください。 ただし、すでに情報が個人を特定できない状態に加工されている場合や、研究の結果が学会や医学論文などで公表されている場合には、あなたのデータを取り除くことができません。
8 研究に関する情報公開
この研究の情報は、UMIN臨床試験登録システムで公表します。また、結果についてもあなたの個人情報を保全した上で、UMINにおいて公表します
掲載場所 https://center6.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000067689
この研究の成果は、学術雑誌や学術集会を通して公表する予定ですが、その際も、参加された方々の個人情報などが分からない状態で発表します。
9 研究計画書や研究の方法に関する資料の入手・閲覧について
この研究の計画について詳しくお知りになりたい場合は、研究責任者または研究分担者にお申し出ください。研究に参加している他の方の個人情報や研究の知的財産等に影響しない範囲で、資料をお渡ししたり、お見せしたりすることが可能です。
10 個人情報等の取り扱い
あなたの情報は、氏名等の個人を特定する内容を削除し、代わりに符号をつけた状態で管理します。あなたの氏名等とこの符号とを結びつける対応表は、本研究用のWebサーバーを用いて、名古屋市立大学で厳重に管理します。
各機関と名古屋市立大学との間で、情報を提供し合う際にも、個人情報を厳重に管理します。情報は、氏名等の個人を特定できる情報が付いていない状態で送付します。情報は、氏名等の個人を特定できる内容を含まない状態で、ファイルにパスワードをかけて電子メールで送付するか、あるいは、この研究用のWebデータベースに入力することにより提供し合います。データを取り扱う際には、ウイルスチェックが十分されているパソコンを使用します。
11 情報の保管方法、廃棄方法
この研究の情報のうち、紙媒体の情報は施錠可能なキャビネットに保管します。電子媒体の情報は、外付けのハードディスクに保管し、ファイルにパスワードをかけて、施錠可能なキャビネットに保管します。また、研究期間中に、あなたが事務局から送付するメールに添付されたURLにアクセスして入力してくださった情報や、アプリ上で入力してくださった情報は、この研究用のWebサーバーに保管されます。
保管期間は、この研究の終了について報告した日から5年を経過した日、またはこの研究の結果の最終の公表について報告した日から3年を経過した日のいずれか遅い日までです。
保管期間が過ぎた後、情報は廃棄します。紙媒体の資料は、シュレッダーで裁断し、電子媒体の情報は削除して復元不可能にした上で廃棄します。
あなたが研究参加の同意を撤回し、それ以降の情報の利用を拒否された場合、同様の方法で廃棄します。
12 あなたの情報を将来の他の研究に用いる可能性や、他の研究機関に提供する可能性について
この研究の情報を、将来の他の研究に用いたり、他の研究機関に提供したりする可能性はありません。
13 研究により得られた結果等の取り扱い
この研究で行った解析の結果は、研究的要素が強く、あなたの健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性が十分でないため、解析の結果をお伝えしません。
14 相談やお問合せがある場合の連絡先
この研究について知りたいことや、ご心配なことがありましたら、遠慮なくご相談ください。
【事務局・問い合わせ先】
研究実施機関: 名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学
連絡先 : 電話: 090-7042-9321 メール: info@sakura-pj.org
(対応可能時間帯)平日12:00~15:00、16:00~19:00
対応者 : 明智龍男 酒井美枝 利重裕子
15 あなたの費用負担、謝礼の有無
スマホのアプリはすべて無料でご利用いただけます。ただし、アプリの使用時やデータの送受信にかかる通信料は、ご利用の携帯電話会社へお支払いいただく必要があります。また、本研究へのご参加に関して、些少ながら謝礼(アマゾンギフト券:アンケートに全て回答してくださった場合は5000円分)をメールにてお送りさせていただきます(なお、クオカードの郵送になる場合もございます)。
16 この研究に参加しない場合の治療方法等について
この研究に参加しても参加しなくても、行う治療は同じです。
17 研究実施後の医療の提供に関する対応
この研究に参加していただいた後の治療等に制限はありません。
18 研究によって生じた健康被害に対する補償の有無、その内容
本研究は、ほぼ危険性は伴わないため、この研究を行うことによる健康被害に対して補償や賠償保険などは準備しておりません。もし、身体状態や精神状態が悪化した場合には、お手数ですがかかりつけの医療機関や主治医にご相談いただければ幸いです。
19 モニタリングおよび監査について
研究がきちんと行われているか、または研究結果の信頼性があるか確認するため第三者が行う調査を、モニタリングや監査といいます。
この研究では、モニタリングや監査を行う予定はありません。
20 この研究の資金源および利益相反について
企業等の関与により研究の公正さが損なわれる可能性がある状態のことを、「利益相反」といいます。企業等から研究資金の提供を受けている場合等には、利益相反を適切に管理する必要があります。
本研究は、日本医療研究開発機構研究費・革新的がん医療実用化研究事業(研究開発代表者 明智龍男)」の研究助成により実施するものです。
なお、この研究では、企業等の関与と、研究責任者および研究分担者等の利益相反申告が必要とされる者の利益相反(COI)について、名古屋市立大学大学院医学研究科医学研究等利益相反委員会の手続きを終了しています。
また、共同研究機関においても各機関の規程に従い、適切に対応しています。
21 研究成果の帰属について
この研究で得られるデータまたは発見に関しては、研究者もしくは研究者の所属する研究機関が権利保有者となります。この研究で得られるデータを対象とした解析結果に基づき、特許権等が生み出される可能性がありますが、ある特定の個人のデータから得られる結果に基づいて行われることはありません。したがって、このような場合でも、あなたが経済的利益を得ることはなく、あらゆる権利は、研究者もしくは研究者の所属する研究機関にあることをご了承ください。
22 開発業務委託機関について
研究用ホームページの開発と電磁的インフォームド・コンセントなどの患者登録管理システム構築を、株式会社アクセライトに業務委託しております。
研究参加のお申込み
研究参加のお申し込みは以下のフォームよりお願いいたします。